近年、レギュラー印刷、いわゆるカラー印刷が非常に多くなってきました。以前のコラム、「第3回 色の作り方」でも書きましたが、今回は少し違った角度から書きたいと思います。
レギュラー印刷とは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のプロセスカラーと呼ばれるインキを使用し、その濃淡調整をしながらの掛け合わせでほぼ全ての色を表現する印刷方法です。
プロセスカラーの印刷は、JapanColorの基準や、企業独自の基準パターンを基に印刷するため、色味があまり変わらず、信頼性も高いです。また、版をコンピュータ出力するので、色調整はコンピュータで行うようになり、版下制作→製版→印刷という連携が非常に安定しています。昔は版数がネックになり、部数が少ないとどうしても高価になったのですが、小数のものではデジタル印刷が登場しましたので、部数によっての使い分けで、お手軽にカラー印刷ができるようになりました。
特色印刷とは、レギュラー印刷で使用するプロセスカラー以外の色も含めて、印刷前にインキを混ぜ合わせて色を作り、作った色で印刷する方法です。特色はメーカーが作成しているだけでも何百種類というインキがあります。混ぜて作られたインキで印刷するので、レギュラー印刷では表現できない色も作る事ができます。
また、金・銀・蛍光等は特色でしか印刷できません。特色の中でも色作成のベースとなる特色が何種類かあり、この色を何%、この色を何%という感じで、DIC(大日本インキ化学)のカラーガイドと配合表を見ながらインキを練ったり、機械で練る等して作ります。
レギュラー印刷との大きな違いは、製版をした段階で色がほぼ決まるレギュラー印刷に対して、特色印刷は版の段階ではただの1色版ですので、印刷直前もしくは印刷中に調整を行います。また、レギュラー印刷は、必ず4版必要なのに対して、特色ごとに1版ずつの版数になります。 ですので、1色、2色、3色の印刷物では特色印刷が多いです。
特色インキの作成は作り手の感性と機械が大きな影響を与えます。また、1つ1つの印刷物毎に色を作らなければいけないため、その分技術と手間がかかります。インキを練って、紙に付けて、光に当てながら、色々な角度からじっくりと見本との色味を確認するその作業は、初めて私がそれを見た時とてもかっこよく感じた事を覚えています。まさに色を操る職人でした。けれども、作り手によって色が変わる事や、ほんのわずかな配合率の差によって、色の沈み方、インキが乾いた時の色が変わってくる事があるので、安定させるのが非常に難しいのも事実です。そのため最近では特色印刷ができない業者も増えてきているようです。
時代にあったスピードと安定した印刷物に対応するため、特色を練る技術が犠牲になっているような気がします。レギュラー印刷の版数のデメリットも、もしかしたら版自体がなくなり、1色2色の印刷物であっても、ほとんどをプロセスカラーのレギュラー印刷で印刷する日が来るかもしれませんね。