第44回 昔の機械

昔の機械と言いますか、いわばコンピュータと繋がっていない機械の事です。この機械は人が機械と機械の間に立って、機械同士を繋げています。繋げているというか、1つの機械が作業を終えると、加工商品をまた次の機械へ持っていくだけなのですが。

今回この昔の機械と言いましたのは、前回まで書いていました、PCネットワークから離れた、手作業で操る機械の事です。機械間の連携にPCを使わないので、PCに振り回される事なく、業務を遂行する事ができるのです。人が使い、人の感覚で調整をし、人の判断で動きを制御する。頻繁にバージョンが上がって使えなくなったり、整合性が取れなくなったりという事はありません。こういった機械はPCの世界で悩んでいる時には逆に安心感があります。

印刷物を製作する時には、1工程毎に機械が存在しますが、それを操る人の技というのは、まだまだ重要な部分を占めています。デジタルの世界は、0と1だけですので、微調整というのが非常に苦手です。それでも調整度の数自体を細分化して対応できるようにできますが、用意されていない数値には絶対になりません。

逆に昔の機械はアナログですので、必ずといっていいほど微調整をしなければなりません。それを操る人の感覚で微調整が行われます。機械の色々な箇所の微調整を、経験や知識によってするのです。それは、頭を使い、身体を使い、上手くいくようにと結果のための過程が大切になってきます。過程を踏まえた上での結果を考えられると、自ずとイレギュラーにも対応しやすくなります。結果だけが残っても、やり方や原因が分からないと、とても薄っぺらな対応力にしかなりません。そういった部分を考えながら、昔の機械を眺めていると、人を成長させる素晴らしい機械だなぁと改めて思います。

昔の機械の話ばかりになってしまいましたが、もちろんPC上でも考え方は同じだと思います。考えなくてもよくなった事も多くありますが、考えた方が良い事もたくさんあります。パーソナルなコンピュータは多くの場所で、素晴らしい処理能力を与えてくれましたが、操る人の力を軽くしてしまいました。より楽に、より簡単にはいい事なのですが、人個々の能力の向上は、怠らないよう注意しなければいけないのだと思います。

PCでの作業や連携は、スピードを速めたり、正確さを高めたり、また誰もが簡単に使えるようにする為だと思います。逆にPCを利用しない機械は、人がその作業のほとんどを担います。その人ならではの技や知識を活用して、工夫された作業を行います。
それは、その人がいないとできない事や、PCよりも早く正確に製造する事はできないかもしれません。けれども、それはそれで大きな価値があると思います。人が伝える技や知識を認識し、機械に操られる事なく、それを動かす人自身もしっかりと成長し、活きる環境を考えていきたいと思います。

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