印刷物として常に関わりのある、紙という媒体。今回はその寿命について書きたいと思います。
紙には寿命があります。世の中に存在するものほとんどが寿命はあると思いますが、古くから歴史を伝え、現在まで語り継ぐ媒体として最も多く使われてきた紙ですが、その紙にも寿命はあります。寿命が尽きた紙はどうなるかと言いますと、破れたり、崩れたり、ボロボロになって消滅します。
紙には大きく分けて、洋紙と和紙があります。
洋紙というのは西洋から伝えられた作り方で製造されたもので、現在一般的に流通している9割程は洋紙と言われています。逆に和紙は和をイメージした製作物や芸術品等、特殊な用途に使われる事が多いです。洋紙の寿命は100年程ですが、和紙の寿命は1000年と言われています。
この寿命の差にも出ているのですが、洋紙と和紙の大きな違いは、「原料」と「構造」と「製造方法」です。
洋紙は広葉樹から作られる木材パルプを原料とし、機械漉(す)きによって作られます。大量生産するため、品質は一定で多量に使用するのに適しています。ただ洋紙の場合、材料の繊維は原形を残さないほどに打ち砕きますが、和紙はある程度、繊維の形を保ったまま仕上げます。さらに、紙の劣化を進める成分が多く含まれているため、変色や変質が起こりやすいです。
和紙は日本古来の製法による紙で、楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)などの樹皮を原料として、手漉(す)きによって作られます。現在は種類によって機械漉きでも作られています。半紙・鳥の子・奉書紙・檀紙などがあり、薄くて強靭で、風合いが美しい紙が得られます。
和紙の場合、その非常に長い繊維を薬品などを殆ど使わずに複雑に絡み合わせて漉きあげ作製されます。繊維が長くて太く物理的に丈夫なこと、紙を酸性化させる硫酸アルミニウムを使っていないことなどから、洋紙と比べても耐久性が高い理由です。ただ、和紙は大量生産に向いてないので、あまり多く出回っていません。原材料の量や手間もかかる為、どうしても価格が高くなってしまいます。
歴史上にあった問題として、1980年代に、洋紙劣化の問題が起きました。図書館に保存されている書籍が茶色く変色し、粉々になってしまうことがあったようです。日本で最初の洋紙が生産されたのが1874年である事から、寿命通りの劣化が起きたのです。この問題の対応策として、劣化の原因である、硫酸アルミニウムを使わない中性紙という紙も開発され、寿命も300~400年と長くなっています。現在使用されているほとんどが中性紙です。
今を生きる自分にとって、100年、1000年という紙の寿命を意識する事はあまりなかったのですが、用途によっては、寿命を考えなければならない事も必要であると思いました。