第17話 パッケージを傷から守りリサイクル適正も高い!…「ニス加工」

こんにちは!「印刷物のちょっと深~い話」第17話を担当いたします、営業部新人のUです。
季節が一巡したわけですが、まさに「毎日勉強」の日々を送る私です。印刷の基礎知識はもちろん、日々更新される技術・情報にも置いていかれないようにしなければいけません。
どの業界でもそうだと思いますので、私と同じ環境で踏ん張っている方々、大変だと思いますが、私たちは同志です。一緒に頑張りましょう!笑

さて、私が今回お話ししたいテーマは

「ニス加工」

です。
ニスという言葉を聞くと少し懐かしく感じるのは私だけでしょうか?子どもの頃に図画工作で木工工作をしたときに使いましたよね。窓を開け放った教室、刷毛で薄く塗っていく…。

ニス加工を施す目的を一言で言うと「表面の保護」です。印刷がされている表面に、その上からニスを引いて、表面をコーティングするわけです。

たとえば…お菓子が入っているパッケージで、箱の表面にイラストや写真、文字が印刷されているものがたくさんあるかと思います。
美麗なイラストや商品に合わせたイメージカラーをパッケージ全体に印刷しているもの…色鮮やかで、見ているだけで目が楽しいパッケージ。
「パッケージに惹かれて買ってしまった」なんて経験がある方も少なくないのではないでしょうか?ちなみに私はコーヒー豆のパッケージに弱いです。多少高くても好きなデザインのものについつい手が伸びてしまうんですよね…。

そういうわけで今回はパッケージに対するニスに絞ってお話しさせていただきます。

店頭で陳列されているパッケージは、平積みであったり並べられていたりして、パッケージ同士は接触していますよね。商品を梱包しているとき、運搬しているとき、店頭に並べるとき。パッケージ同士は触れ合っていて、振動などによって幾度も擦れているわけですが、表面に何も加工をしていないと印刷面が傷ついてしまう可能性が高いのです。
印刷面が傷つくとどうなるのか。色が落ちたり、移ったりします。指で擦るとインクが指についたりします。
特に「ベタ」と言われるような濃いインク濃度で隙間なく面を塗りつぶす印刷をするとき、あるいは乾きにくい紙に印刷をしたとき、そのリスクは高まります。

それを防ぐことがニスの大きな役割であり、コストをかけて施す目的です。

ニスが引いてある表面が擦れると、まずニスから傷ついていきます。インクの代わりにニスから先に剥がれていくわけです。ニスが剥がれ切ると印刷面が剥き出しになるので、そこまで剥がれるとインクに直接触れることになりますが、購入したお店から持ち運んでいる時間程度であれば問題ないことがほとんどです。

ニスには「グロス」と呼ばれる艶があるものと、「マット」と呼ばれる艶の無いものがあります。ニス加工をする商品に合わせてどちらを使うのかを選ぶことになりますが、そこはお客様と一緒に「どんな商品として仕上がってほしいのか」をイメージしていただきながら打ち合わせを進めます。
ニス加工は印刷工程で同時に行うことができるため、比較的早く仕上げることができ、コストも安価です。

ニスにもいくつかの種類がありますので、ここでまとめてご紹介いたします。

OPニス

通常の印刷機で刷ることができるので早くて安価。ただ、ニス自体が無色透明ではないので若干黄味がかっていまして、時間の経過とともにその黄味も増してしまう可能性があります。長期間使用するような用途には向かないかもしれません。

水性ニス、UVニス

印刷機の最終部分についたコーターユニットで塗布します。水性ニスは熱風で、UVニスは紫外線で乾燥させます。これらはOPニスと違い、変色しにくいものが開発されています。

また、ニスはとても薄く表面をコーティングしているものなので、耐久性は高くありません。耐久性を求めるのであれば「PP加工」という加工をおすすめします。
こちらは印刷が終わった「あと」にPPフィルム(ポリプロピレン)を貼る加工です。こちらにもグロスとマットがあり、好きな質感の方を選ぶことができます。
デメリットとしてはニスに比べて時間がかかることと、高価なこと。そして次にお話しする環境負荷、リサイクルに関してはニスに及びません。

というわけで、次にお話したいのは環境への負荷についてです。この点においてニスはなかなか優秀なんですよ。
たとえば、古紙再生促進センターが提示している「古紙再生促進センターの定める主な禁忌品」によると、食品残渣のついた紙(ピザやケーキを直接包装した容器)やシール、粘着テープ、レシートなどは古紙としてリサイクルに出すことができません。知らずに出してしまうと機械のトラブルや不良品の原因になってしまいます。
その点、ニスは違います。
なんと、ニスを引いた紙でもそのまま古紙としてリサイクルできるのです…!
個人的に抱いていたイメージでは、なんとなくダメな気がしていました…調べてよかったです。
ニスは一般社団法人日本印刷産業連合会が設けている古紙リサイクルの適性ランクでは最高の「紙、板紙へのリサイクルにおいて阻害にならない」とされるAランクです。
ちなみに先述のPP加工は「紙へのリサイクルには阻害となるが、板紙へのリサイクルには阻害とならない」Bランクとなっており、一歩及びません。パッケージに使われることの多い板紙に関しては阻害にならないので全然ダメなわけではないのですが、ニスが優秀すぎるだけなんです…!

さて、ここまでニスを熱く語ってきましたが(半分くらい環境問題について考えていた気もしますが)、その魅力が少しでも伝わったでしょうか。そうであれば嬉しいのですが。
印刷業界にいるととても身近な存在である「ニス」。
今回紹介しようと決めてから改めて調べていくことで、私自身がニスの魅力に気付いてしまい、当初より熱量を込めてお届けするに至りました。
ほんの少しだけ、深い話になったでしょうか。

印刷物は印刷をしておしまい、ではなく表面に加工をしたり製本したりと「その先」にいくつかの工程を経ることがあります。このニス加工もそのうちのひとつです。
皆さんが普段手に取られているパッケージの多くにもきっと何らかの表面加工がされているはずです。もちろん意識して見てみないと気がつかない、今回のようなケースもたくさんあるわけですが。
そういったちょっとしたところに気を配ってこそ、というものではないでしょうか。
せっかく綺麗な印刷でできたパッケージ、少しの時間とコストをかけて守ってあげてはいかがでしょうか?

さて、なんとなくいい感じの言葉で締めて私は失礼いたします。
次回の「深い~話」をお楽しみに!

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